| 2007.10月 「Made in Japan」 10月になりました。東京では先日、30℃を超える猛暑が 一日だけあったかと思うと、ここ数日は、「涼しい」という より、まるで冬の始まりかのように寒い日もあります。 突然の気候の変化に体調を崩された方もいらっしゃるのでは ないでしょうか。 だんだん空気が乾燥する季節になって行きますので、風邪な ど引かないよう、十分ご注意下さい。 ところで、最近、「日本製」の製品というものをほとんど 見かけなくなったと思いませんか? スタジオのような場所には、アメリカやドイツ等、海外メー カーの楽器や機材が多いのが普通ですが、音楽の現場に海外 メーカーの製品が多いのは、従来の伝統や一種の神話のよう なものが今でも根強く残っているためと、工業製品として優 れているものが、必ずしも楽器や機材として重宝する訳では ない、という理由からであって、決して国産品が性能的に劣 っている訳ではないのです。 確かに、「Made in Japan」は諸外国から、品質が低いと か、すぐ壊れると言われた時代もありました。 しかし、それは今から30年も40年も前、日本がまだ発展途上 だった頃の話です。 元もと日本は資源の乏しい国ですから、海外から輸入した原 材料を基に国内で製造し、製品を国内で消費する一方、それ らを輸出する事で収益を得て来ました。 日本人特有の勤勉さもあったのでしょう、原材料を売って稼 ぐ事ができない分、日本人の底力は、物の生産技術をどの国 にも負けないくらいのレベルまで進歩・発展させました。 海外製品のような特別な「色気」は感じないかもしれません が、概して国産品には、技術水準の高さのみならず、海外製 品には無い、きめの細かい気配りや、使い勝手の良さが感じ られます。安全性も高く、製品の信頼性においては群を抜く ものがあると言えます。一言で言えば、親切過ぎるまでに 「気が利いている」のです。 日本人にとっては正にしっくり来る事が多く、日常的な道具 一つを取っても、「日本人が使うなら、やっぱり日本製に限 る」とさえ思えます。 ところが近年、日本のメーカー製であっても、「Made in Japan」と記されている製品が少なくなりました。日本人が 使う物を、日本人が作らなくなったのです。 日本で物を作れなくなったからではありません。 理由を突き詰めれば単純で、販売価格を抑えるべく、メーカ ー自身がより低コスト、低賃金の国に製造を発注するように なったためです。 たとえ現地工場や設備を建設する費用や製品を輸送するため のコストがかかったとしても、人件費の高い国内で生産する よりも、長い目で見れば、その方が安く物を作れるのです。 世界的な流通システムが確立した事も見逃せない要因です。 もちろん企業が物を作る以上、売らなくてはなりません。 メーカーとしては、売れるように売れるようにと、少しでも 価格下げる企業努力をするのが普通です。 そのお蔭で、私達は以前より良い物を安く手に入れる事がで きるようになり、外面的には、日本人は何でも持っている豊 かな国民になりました。 しかし、私はこの事に大きな危機感を覚えます。 例えば国内の工場で生産していた物を、海外で生産する動き が主流になれば、内需は縮小し、国内産業は次第に衰退しま す。実際、神業とも思えるほど高度な技術を持った町工場な どが、惜しくも廃業する例も見られます。 所謂「ドーナツ化現象」です。 これが更に進めば、物は持っていても国内全体としては潤わ ず、物を作る技術は枯渇して行く…。 これは、先進国なら通常見られる現象ですが、物を購入した り消費したりする側にも責任があります。 それに伴い、日本人が本来持っているはずの「目利き」は 時代を追うごとに鈍くなってきているような気がして、とて も残念です。 古来、日本人の物作りに対するこだわりは、「匠」という言 葉に表されるように、世界一だと私は思っていますが、その 価値が解り、かつ優先できる人が少なってきているのです。 安くなければ売れない、買わない、しかし「安いから大事に しない」という市場の動きは、日本人の心の貧しさを映し出 しているようで、恥ずかしくなります。 作り手にとっても買い手にとっても、物の値段は適正でな くてはなりません。物の価値を無視して、いたずらに安さを 求める事は、自分で自分の首を絞めるという事に、早く気づ く必要があります。 目先の価格に惑わされず、確かな物や技術を見極める目と、 それに見合った対価を支払う物分りの良さがあれば、国内全 体が潤い、真に豊かな生活が営める世の中がやって来るので はないでしょうか。 こんな時代だからこそ、身近な物からもう一度、「Made in Japan」の匠に目を向けてみましょう! |
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